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個人プロジェクト

「生きられた庭」は京都府立植物園という「庭(garden)」を舞台に開催されるガイドツアー形式の展覧会です。多様なメディアを用いる7名の現代作家が、植物園の中で展示を行い、これをキュレーターが毎回異なるプログラムのツアーにして観客を案内します。

絵画を庭園内に展示したり、噴水にオブジェを設置するなど、各作家の「庭」に対するアプローチはさまざまで、「庭」にあるものたちは作品によって活性化されたり、違った意味を持つようになります。この毎回異なる組み合わせのツアーに参加することで、「庭」は全く別のいきいきとした様相を帯びて見えてきます。

タイトル「生きられた庭」とは、私たち人間の存在だけにとどまらない、多様な生命の営みが「庭」という空間に宿される様相を表しています。そこでは表現者が生み出す芸術空間と、生命が萌む生態系の空間の邂逅(かいこう)が生じます。それは展示装置としての美術館と植物園の出会いであり、人工と自然の重なり合いであり、そして事物と生命の交差でもあります。本展はこうした多元的な関係性の中で、混沌とする現代社会という「生態系」の一部として存在する人間を思考する空間を描き出すのです。

また、1日7回行われる「ナビゲーション」と名付けられた毎回異なる内容のガイドツアーは「庭」に生起する出来事に物語を与えます。この展覧会としてのツアーの様子は映像やテキストの形で「ドキュメンテーション」としてウェブサイト上に公開されます。本展覧会はこの「ナビゲーション」と「ドキュメンテーション」を介することで、あらゆる事象に紐づく時間/空間に新たな物語を紡ぎ出し、現代における「生きられた空間」について再考する試みです。